
横須賀綺譚
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COMMENT
この新人監督の第一作は大変な意欲作だが、ショットの連鎖ではなく台詞によって語られている点で、秀作とはいいがたい。ただ、すべてを九十分に仕上げているところは、高い評価に値する。
蓮實重彦(映画評論家)
日常が破壊される容赦ない現実は幻想のようであり、同時に失われた日常もま た幻想だったと思えてくる。そんなあてにならぬ世界で、たしかなものをつかみたいという願いを感じる作品。
小野寺系(評論家)
その問題提起や壮といえる映画であることは間違いない。
切通理作(評論家)
異様な肌触りの面白さだった。真正面から題材と向き合いつつジャンルを越え
エンターテイメントとして昇華させるには相当な勇気とセンスが求められるが監督の
大塚信一はそれを見事にクリアしていた。次はどう来るのかとても楽しみだ
佐藤佐吉(脚本家)
「記憶」というものに多角的な視点で挑んだ本作から読み取ることができる数々の示唆的な設定やセリフ──〈メッセージ〉──は、いま、さまざまな現実に直面している一人ひとりが、それぞれの受け取り方をすることができると思う。 この環境下にこそ公開される意義や必然性を、強く感じる。
折田 侑駿(文筆業)

佐々木俊尚(ジャーナリスト)
嫌な映画だ。
何でも都合良く忘れて
できるだけ楽に生きようとする
私たち自身の惰性を直視させられる
森義隆(監督)
記憶と忘却という軸線に、当事者と非当事者というもうひとつの軸線が重なり、それぞれの登場人物の思いが強く浮かび上がる傑作。
『現実』が現実を侵食していく
解説
2011年3月11日――あの日、私たちは「ついに来た」と思ったものだ。燃えさかる気仙沼を見ながら、原発のメルトダウンの報道におびえながら。そして、生き延びたのなら変わろうと思った。変わらなくては、死んだ人たちに顔向けできないじゃないか。あれから9年の月日がたち、まるで夢でも見たかのように、私たちはあの日の気持ちを頭の片隅に追いやって生活しています。主人公の春樹はそんな私たちの一人です。春樹はひょんな事から、被災して死んだと思っていた元恋人が「生きているかも」との怪情報を得て、横須賀へと向かいます。その旅はあの日の気持ちを思い出す旅でした――
春樹役に『恋の罪』『こっぱみじん』『走れ、絶望に追いつかれない速さで』などで注目を集めた小林竜樹を迎え、共演者にインディーズ映画から『シンゴジラ』といった大作、『anone』などの TV ドラマまで幅広く活躍する川瀨陽太、友情出演に烏丸せつ子、昨年、映画界を盛り上げた『カメラを止めるな』の長屋和彰らが脇を固める。監督・脚本は劇場公開作品としては長編デビューとなる大塚信一。普段はラーメン屋で働きながら本作を5年かけて完成させた。

